カテゴリー: ユーザー通信 WEB版

  • ユーザー通信240号 3面 DMG森精機の現時点(2021年12月期連結決算発表)

    22年12月期業績予想 営業利益は1979年上場以来のピーク更新へ

    工程集約・自動化対応、脱炭素投資が加速

     

    DMG森精機(本社=名古屋市中村区)は2月10日、2021年12月期(1月1日~12月31日)連結決算(国際会計基準)の発表を行った。

    連結受注は4560億円(前年比63%増)、売上収益は3960億円(同21%増)、営業利益は231億円(同2・2倍)、営業利益率は5・8%(前年は3・3%)、税引前利益は196億円(前年比3・8倍)、親会社の所有者に帰属する当期利益は135億円(同7・7倍)。

    国内外で工作機械需要が回復、脱炭素や半導体など広範囲の分野で設備投資が活発化し、昨年度は四半期ごとに業績の上方修正を繰り返し、年度売上高は従来計画を上回り、年度営業利益、当期利益は従来計画を達成、足元の受注も好調が続く。

    今年度(22年12月期)の重点施策として、「分社化による収益管理の徹底」を軸に、「工程集約→自動化→デジタル化の促進」、「受注の地域分散、業種分散、顧客の規模分散+工程集約化、自動化で収益の安定化を図る」、「伊賀事業所=世界最大の工作機械組立工場、奈良事業所=世界最大の工作機械システムソリューション工場へ再編」、「奈良商品開発センタでの先端開発、人材育成強化」、「中期経営計画策定」を挙げる。

    その上で業績見通しは、連結受注4800億円(5・3%増)、売上収益4300億円(8・6%増)、営業利益400億円(73・4%増)、税引前利益365億円(86・1%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益250億円(85・7%増)とし、営業利益は1979年上場以来のピーク更新、当期利益は2015年のAG(DMG MORI SEIKI AKTIENGESELLSCHAFT)統合時の特殊要因を除きピーク更新を予想する。

    なお、同社ホームページ上にてオンデマンド配信する決算説明会で、21年度について森雅彦社長は概ね次の旨トピックとし、言及する。

      ×  ×  ×  ×  ×  ×

     連結受注の4560億円は従来計画4500億円を上回り、計画以上の強い回復を感じている。機械本体の受注残高は1640億円(昨年12月末)へ増加。960億円(20年末)からのスタートなので十分な受注残をもって22年度をスタートできている。今後もできるだけ10~12ヶ月以上といった長納期の案件をしっかりと受注し、必ず訪れる景気の下降局面でのブリッジとして業績変動を抑制していきたい。

    年度フリーキャッシュフローが304億円へと大幅に改善した(20年度は52億円の赤字)。これは受注増における前受金の寄与が大きい。前受金制は日本国内でも随分と浸透してきている。中国、米国等海外においては全て前受金にて受注をカウントしており、長納期の案件が増加する中、キャンセル防止等と同時にキャッシュフロー改善に役立っている。

    欧州ベースの脱炭素経営推進の取り組みが非常にスムーズに進められていると思う。気候変動対応は喫緊の課題であり、しっかりと取り組まなければならない。ドイツと日本の統合会社である当社は、業界の中では最も早く対応したいと考え、欧州の規制にしたがって改善、改良していきたい。

    これらをもって、借入金の返済も同時に行いつつ、期末配当を30円へ増額し(従来計画20円)、年間配当計画は40円とする。また、AG株を20年4月に追加取得したため金融費用が減少している。実効税率の適正化を各子会社等で行ったことにより当期利益の大幅増に結び付いている。今後も確実に最終利益を計上できるように対応していく。

    物流費では、日本から欧州向けコンテナ費用が3倍以上となり、アメリカの船便は西海岸沖に滞留し減便等の影響を受けているが、この傾向は今後も続くと思われる。

    また、「見本市等の無駄を省く」「値引き率の改善」「リーン生産を行う」「サプライヤー様の適切な管理」「売り掛け債権の回収」「検収を俊敏にあげる」等により、フリーキャッシュフローは大幅黒字となった。

    ▲森社長による決算説明会のオンデマンド配信(PC画面のスクリーンショット)

  • ユーザー通信240号 2面 サンドビックの現時点(コロマント会総会 オンライン開催)

    ソリッド、自動車アルミ、デジタルエリアでの拡販にフォーカス

    市場ブランド力の向上、新規顧客拡大を目指す

     

      サンドビック コロマントカンパニー(本社=名古屋市名東区)は、未だコロナ禍が収束しない中、またデジタル化を積極的に進めるにあたり、同社の主力販売店で構成するコロマント会の令和4年度総会を、今年もオンラインで開催し、3月10~11日の2日間動画配信した。

    このうち西日本総会では、最初に有本浩三会長(有恒精機商会社長)が登場し、「コロナ禍においては、サプライチェーンのグローバル化がかえって災いし、物流の遅延、人手不足等で部品の供給不足を引き起こし、生産が滞る事態に陥ることになった。部品供給不足は生産の遅延および価格の高騰を招きそうな展開となっている。この難局でユーザーの生産性の向上に役立てるよう、知恵を絞る必要があると考える」旨あいさつした。

    続いて、サンドビック コロマントカンパニー、山本雅弘カンパニープレジデントによるメーカーあいさつと報告、髙宮真一カンパニーバイスプレジデント(西日本営業統括)による主要営業戦略では、概ね次の内容を述べた。

     

    業界で先陣を切り変化を発信、デジタル化リードし貢献(山本カンパニープレジデント)     

    昨年サンドビックグループは、少し戦略をアップデートした。 ▽SHIFT TO GROWTH=成長へのシフト▽SUSTAINABILITY SHIFT=持続可能へのシフト▽DIGITAL SHIFT=デジタル化へのシフト▽CUSTOMER,S 1ST SHIFT=顧客に一番に選ばれる企業へ▽AGILE THROUGH CYCLE=早い経済環境の変化へ迅速に適応する▽EMPLOYER OF CHOICE=選ばれる雇用主へ、と大きく6つのカテゴリーで構成している。

    この中で、特に「成長へのシフト」と「持続可能へのシフト」にふれれば、まず成長へのシフトについては、既存事業において戦略的に重要な産業セグメントや用途向けにソリッド工具、自動車アルミ、デジタル製品などの強化製品や旋削分野などで新製品を投入し、新組織体制で集中的にマーケティングや営業活動を実行し、マーケットシェアを獲得しながら超硬工具メーカーとして成長していく。加えて、今後も積極的なM&A活動を実行しさらに成長を加速していく。

    次に持続可能なビジネスは、顧客、ビジネスパートナー、投資家、従業員、将来の従業員などにとって重要性が増し続けている。サンドビック コロマントでは、People(人)、Planet(地球)、Plofit(収益)のエリアにおいて、当社の価値を明確に示すことで差別化する絶好の機会と捉えている。安全で健康的な職場環境を維持し、当社とユーザー双方でのCO削減と循環型社会の形成、ユーザーの生産性向上および事業の成長という目標達成のために貢献していく。

    昨年を振り返れば、コロナ禍が収束する兆しが見えない中、これまでの働き方を大きく変え、バーチャルとリアルのハイブリッドな環境でビジネスを押し進めてきた。産業別では自動車、一般機械、工作機械分野が牽引し、2020年対比で大きく業績を伸ばすことができた。

    社内改革を実行し、組織改編、さらにデジタル化を進める上で必須となる社内システムを更新し、SAP(企業の業務プロセスのベストプラクティスをパッケージ化したソフトウェア)を導入した。この新しいシステム導入により、データを基に顧客に一貫したデジタルサービスを提供できる土台が構築できた。

    我々のビジネス環境は日々、変化し続けている。グローバル企業である当社としては、世界で培ってきた経験をもとに業界で先陣を切って変化を発信することで、業界のイノベーションやデジタル化をリードし、貢献できると考えている。

     

    新制度で一歩先ん出た販売店モデル構築目指す(髙宮カンパニーバイスプレジデント)  

    2025年までの主要営業戦略は、「成長戦略」「新チャンネル戦略」「デジタル化戦略」が3本柱になる。

    成長戦略では、顧客のニーズに合わせた、成長戦略に則った戦略的活動をチーム一体となり、データ分析を駆使して実施する。同時にグローバルでのM&A戦略ともリンクさせ、新規オポチュニティエリアであるソリッド、EV化に伴う自動車アルミ、デジタルエリアでの拡販にフォーカスする。

    新チャンネルでは、新特約店制度により、より長期的なWin Winの関係強化とサービスの提供により、一歩先ん出た販売店モデルの構築を目指す。ユーザー含めトレーニングコースであるサンドビックアカデミーを強化しスキルアップを図る。最大限の営業効率を創出する新しい働き方「New Way of Working」を加速させ、販売店の売上により貢献できる仕掛けを行っていく。

    デジタル戦略では、スマートフォンでのIFⅰnd(アプリ)を中心としたセルフデジタルツールを本格運用することで販売店との相互のシナジー効果を創出し、最大限の営業効率とプロフェッショナル化を目指す。デジタルマーケティングを強化し、市場ブランド力の向上とそれに伴う新規顧客拡大を販売店とともに目指す。

    コアビジネスの機械加工部分の継続的強化だけではなく、昨年度実施したようなCG Tech(米)買収などのM&A活動をグローバルで展開、強化、加速し、機械加工の前後工程、設計、工程・作業工程、検証など含めたバリューチェーン全体での成長戦略を強化、推進する。

    2022年度のフォーカス製品は、▽アルミ合金加工用フライスカッター『M5シリーズ』▽小径超硬ソリッドドリル『CoroDrill 862/462』▽難削材加工用高送りフライスカッター『CoroMill MH20』▽設備の見える化を可能にする『CoroPlus マシニングインサイト』▽センサー内蔵防振工具『Silent Tools Plus』。

     

    タケダキカイがアグレッシブアワード受賞(西日本総会 優秀特約店)

    なお、2021年優秀特約店発表では昨年同様、Special Awardの4つの賞が用意され、このうち「Aggressive Award」はタケダキカイ(本社=京都市南区、米倉克幸社長)が受賞した。同社は毎月全社にてオンライン勉強会を実施し、多くの営業社員が参加している。

    このほか、サンドビック コロマントカンパニー グローバルオートモーティブアルミニウム 加藤尚紀マネージャーによる「自動車産業の変革が切削加工にもたらす影響『次世代アルミ加工への挑戦』」と題した講演も行われた。

    ▲山本カンパニープレジデントによるメーカーあいさつと報告(PC画面のスクリーンショット)

  • ユーザー通信239号 3面 山善 ロジス関東にロボットソーター『t-Sort』を導入

    仕分け業務の自動化・効率化を促進、作業効率約3倍に大幅向上

     

    山善は、国内最大の物流拠点である「ロジス関東」(群馬県伊勢崎市)にて、プラスオートメーション(東京都港区)の次世代型ロボットソーター『t-Sort』のRaaS(Robotics as a Service)活用を開始し、仕分け業務の自動化・効率化を図りながら、労働環境の改善、作業効率および作業精度の向上に繋げていく。

    山善では持続的な成長に向け、2019年度から2023年度にかけて600億円の投資枠を設定しており、対象領域は「DX」「自動化・省人化」「グリーン成長」、そして「物流」の4分野としている。

    昨今の物流業界は、新型コロナウイルスの影響もあり消費者の購買行動変容した中、ECサイトのさらなる需要拡大に伴い業務量が大きく増加している。その一方で、現場は人手不足の傾向が顕著であり、物流作業の自動化・効率化に向けての取り組みは重要な課題となっている。

    そのような中、山善は昨年11月に、主に生活用品の物流拠点であるロジス関東に、プラスオートメーションのロボットソーター、t-Sortを導入した。作業者は仕分けする商品のJANコ ードをスキャンし、商品をt-Sortの上に置くだけで、t-Sortはタグが埋め込まれた塩ビシートの上を自走し、仕分け箱の中に商品を自動で投入する。これにより、誤仕分けは限りなくゼロに近づけることができ、また、バッテリーを仕分け場に設置することで、t-Sort自体が自動充電を行い、24時間稼働する。

    今回、ロジス関東では、24台のt-Sortを導入し、量販店に出荷する雑貨の店舗別の仕分け作業を行っている。仕分け箱の前に緩衝材の役割を果たす「ハンモックシュート」を設置することで、取り扱いに注意が必要な雑貨も破損することなく、t-Sortでの仕分けが可能となった。

    仕分け対象商品は約800アイテム超。縦3㎝×横3㎝・重さ1gのものから、縦45㎝×横30㎝・重さ15㎏のものまで対応している。

    導入後、作業者は従来の12名から5名に減り、作業効率も約3倍と大幅に向上した。さらに、商品だけでなく、梱包箱に同封する納品書もt-Sortが仕分けることで人的ミスを防止しており、出荷に関わるミスも限りなくゼロに近づけている。

    今後は、入庫品の仕分け作業などでもt-Sort活用の検討を進め、t-Sortに商品を置く作業を、AIピッキングソフトウェアを搭載した協働ロボットで代行する技術 検証も進めるにあたり、そのシステム設計と技術検証は、山善のエンジニアが行っていく。

    山善は引き続き、最先端技術の導入により、物流業務の自動化・効率化を促進しながら、取引先店舗へのジャストインタイムでの納品とホワイト物流を推進し、物流品質の向上に努めると同時に、それらで得られる知見を物流会社へ提案としてフィードバックしていく。

  • ユーザー通信239号 2面 山善 自動プログラミングサービス『COMlogiQ』 の提供開始

    生産現場の人手不足解消、生産性の高い業務へのシフトに寄与

     

    山善(大阪本社=大阪市西区、長尾雄次社長)は、昨年5月に販売業務提携契約を締結した、京都府宇治市のHILLTOPおよびそのグループ会社であるThinkRが開発した自動プログラミングサービス『COMlogiQ』(コムロジック)を、山善が取り扱う切削加工機のオプションとして、提供を開始した。

    提供ルートは、山善機械事業部が全国の販売店を通じて、5軸切削加工機のオプションとしてCOMlogiQを生産現場のユーザーに提案する。対応機種は松浦機械製作所「MX330」等にてスタートし、順次、対応メーカーと機種を拡大予定。

    ターゲットとするユーザーは、大手建機メーカー・電機メーカーなど、アルミ・樹脂部品の試作や多品種小ロット対応をしている企業で、このような大手ユーザーにおいても、5軸の切削加工機を稼働させるのに必要なNCプログラムの作成が業務の負担となっており、人手不足も相まって、生産現場における自動化・省人化が求められている。

    COMlogiQは、3Dモデルをアップロードするだけで加工プログラムが自動で作成され、ユーザーのプログラミングにかかる 時間を削減することができる。それによって、新製品開発など、より生産性の求められる業務に人的リソースを投入することが可能となる、注目度が高いサービスである。

    今回の取り組みにより、生産現場の人手不足の解消と新製品開発のスピードアップ等、より生産性の高い業務へのシフトに寄与し、山善は工作機械に付加価値をつけて拡販に 繋げ、ヒルトップグループはCOMlogiQの市場での認知度向上とサービス拡大を見込む。

    HILLTOPは、1961年創業のアルミ切削の試作専業メーカー。職人技のデータベース「HILLTOP SYSTEM」を武器に、短納期・多品種単品・24時間無人加工を実現。「機械ができることは機械に任せ、 人は人にしかできない仕事を」をモットーに、現在は医療機器などの装置開発事業も手掛けている。

  • ユーザー通信239号 8面 ダイジェット工業 「スプリングキャンペーン」4月末まで実施中!

    数量限定、新製品発売を記念し2コース用意

     

    ダイジェット工業(本社=大阪市平野区、生悦住歩社長)は4月28日まで、新製品発売を記念した「スプリングキャンペーン2022」を次の概要で実施している。

    【対象製品】①高能率肩削りカッタ 『ショルダーエクストリーム EXSAP/MSX形、EXSAP-11/MSX-11形』②高能率肩削りカッタ 『ショルダー6 EXSIX形』。

    【セール内容】●A「他社乗り換えお試しコース」=インサート20個購入と他社本体下取りで適用本体1台サービス●B「本体サービスコース」=刃数×インサート10個購入で適用本体1台サービス。

    対象製品は両コースともショルダーエクストリーム、ショルダー6。※材種・ブレーカー違い組み合わせ可。

    販売目標はA・Bコース合計300セット。数量限定につき、なくなり次第終了となる。

    「ショルダー6
  • ユーザー通信239号 7面 賀詞交歓会(大機器協/トラスコ中山)

    「各社のあるべき姿を明確に」(大機器協・中山理事長)

    大阪機械器具卸商協同組合(大機器協)は1月11日、市内のホテルにて、新年賀詞交歓会を開催し、参加人数制限等新型コロナ対策を徹底する中、組合員・メーカー会員ら320名が出席した。中山哲也理事長(トラスコ中山社長)は、コロナに限らず経営を揺るがすこととして「好景気」を挙げ(物価上昇、人件費高騰、人材採用難を招く)、対処法として「それぞれ企業のあるべき姿を明確にすること」等と説いた。

    また前週1月5日にトラスコ中山では、東京・大阪両本社にて賀詞交歓会が開かれ、大阪では中井一雄営業本部長ら13名が来場者を出迎え、新年のあいさつを交わした。

     

    写真/左:大機器協・中山理事長あいさつ、右:トラスコ中山大阪本社への来駕
  • ユーザー通信239号 5面 【宇宙大特集】Space BD 『TSUKIMI』プロジェクト始動

    「テラヘルツ波を用いた月面の広域な水エネルギー資源探査」

    NICT・東大・大阪府大・JAXAと共同PJ、新たな産官学連携の形を実現

    「技術力、情報発信、産業界との接続を、成果の最大化に向け貢献していく」(永崎社長)

     

    東京・日本橋の冬が宇宙で盛り上がった昨年12月、「TOKYO SPACE BUSINESS EXHIBITION」の会期2日目となる15日午前には、日本橋三井ホールのメインステージを会場に、「宇宙商社」のSpace BD(東京・日本橋、永崎将利社長)が、新たなプロジェクト説明会を行った。

    Space BDは、総務省「令和3年度 情報通信技術の研究開発に係る提案の公募」の結果、「テラヘルツ波を用いた月面の広域な水エネルギー資源探査」の委託先に選定されたことを受け、情報通信研究機構(NICT)、東京大学工学系研究科システム創成学専攻、大阪府立大学、JAXAとの共同プロジェクト『TSUKIMI』(ツキミ)として、本格的に始動する。

    ステージ上には、Space BDの永崎社長はじめ、NICT テラヘルツ研究センター 上席研究員の笠井康子氏、東大大学院学工学系研究科システム創成学専攻 専攻長の宮本英昭教授、大阪府大大学院理学系研究科の前澤裕之准教授(※リモート参加)、JAXA 研究開発部門 研究領域主幹の西堀俊幸氏が登壇し、全体像や詳細を説いた。宇宙に関する日本の第一人者が、これだけ勢揃いする機会は非常に貴重だという。

    「月の水の在りかを地図にする」   

    TSUKIMIとは、Lunar 「T」erahertz 「SU」rveyor for 「KI」lometer-scale 「M」app「I」ngを語源とするネーミングで、新たな産官学連携の形を実現する「月の資源探査」プロジェクトである。

    国際的に進められている月の開発利用に関し、我が国がICT(情報通信技術)分野において戦略的かつ優位に推進していくために、総務省が推進する月面における水循環の実態を把握することにより、効率の良い資源獲得を行うことを目指す。要は、「月の水の在りかを地図にする」「水の地図」と言い換えられる。

    テラヘルツ波とは電波と光の境界領域の電磁波であり、「水に敏感」「電波に比べて高周波数なため、センサの小型軽量化が可能」との特徴を有すことから、水資源探査には様々な手段が存在する中、月面の水・氷・土壌水分含有量などの構成物を高精度に推定できる。余談ながら、原理は全く異なるものの、食用豚肉の水分量測定(赤身では69%程度、脂質では16%程度の水含有量が検出)も、テラヘルツ波測定の特徴の一例として示されるそうだ。

    観察と分析においては、水に敏感であるテラヘルツ波を利用し、月面をサーベイ(調査)。月面とサブサーフェス(表面直下)の氷や土壌における水分含有量の分布を高精度に推定する。月観測データのほか、実験室物性測定や独自の解析数理アルゴリズム開発が鍵となる。また、パッシブ(受動型)観測により、昼面・夜面の両面の観測を実現し、昼夜・季節による変動を得ることによって、月面の水循環の実態を把握する。

    Space BDの永崎社長は、「プロジェクト名のTSUKIMIはきょう初めて公開された、素敵な、さすがというネーミングだ。月の水の地図をつくるということは、全てのベースになる、人類にとって大事な、大きなプロジェクトだと思っている。これに我々の持っている技術力、情報発信、産業界との接続を、オールSpace BDでしっかりと成果の最大化に向けて貢献していきたい」と意気込みを述べた。

    「月科学・月資源工学推進コンソーシアム」設置、横河電機、高砂熱学工業など参画予定

    また、我が国発の地球近傍宇宙における科学探査や持続的な経済活動のビジネスのモデルケースを追求する枠組みとして、「月科学・月資源工学推進コンソーシアム(仮称)」を設置。情報共有とアイデア発掘から月の科学・月の資源工学を推進、大小さまざまな月ビジネス群の創出を趣旨に、これに賛同した法人、無償を参加資格とし、参加企業・団体を募集中である。

    なお、月面ミッションへの輸送の視点で役割を担うⅰspace、月面の水資源の開発や利活用について地上での知見を活かした役割を担う予定の横河電機、

    拠点提供とアミューズメント展開に関与する東京ドームに加え、高砂熱学工業、千代田化工建設が参画予定企業に名を連ねている。

    写真/左から、西堀氏(JAXA)、笠井氏(NICT)、宮本教授(東大)、永崎社長(Space BD)。
    宇宙に関する日本の第一人者が勢揃いする稀な機会となった
  • ユーザー通信239号 5面 【宇宙大特集】 昨年末に初開催 『NIHONBASHI SPACE WEEK』

    「宇宙『ビジネス』として見てもらうことが大事/基幹産業に育てる/産業振興のための」が現時点示すキーワードか

     

    昨年12月14~17日、東京・日本橋エリアにて、アジア最大級の宇宙ビジネスイベント『NIHONBASHI SPACE WEEK 2021』が初開催され、「日本橋の冬が宇宙ビジネスに染まる一週間」となった。

    三井不動産が日本橋の街において取り組んでいる宇宙関連領域のビジネス拡大プロジェクト「X-NIHONBASHI」(クロスニホンバシ)の一環として、複数の宇宙イベントが同時に催され、このうち「TOKYO SPACE BUSINESS EXHIBITION 2021」(12月14・15日)には、海外からも注目される国内宇宙スタートアップ企業を中心に、自治体、アカデミア中心の事業協同組合や宇宙航空研究開発機構(JAXA)など、約25の宇宙ビジネスに関わる注目の企業・団体が集結した。

    ブース出展に加え、ステージエリアでは連日にわたり計20本のプレゼンテーションが実施された。間髪入れず20分刻みで、例を示せば、次のような内容が紹介された。

    ▽「軌道上サービスのリーダーを目指して」(アストロスケール)▽「宇宙への挑戦」(大分県)▽「宇宙産業推進ドライバーとしての挑戦~宇宙利用拡大と人材育成~」(Space BD)▽「超小型衛星で全地球を毎日観測~データがあらゆる産業に革新をもたらす~」(アクセルスペース)▽「北海道スペースポート(HOSPO)が生み出すビジネスチャンス」(北海道宇宙関連ビジネス創出連携会議)▽「天地人コンパスの活用事例と今後の展開」(天地人)、等々。

    これらを絶え間なく聴講していると、宇宙ビジネスの現時点を表現する共通項としては、「基幹産業に育てる」、「まだまだ黎明期」、「産業振興のための」、「産業界との接続」、「ビジネスとして見てもらえることが大事」といったニュアンスが拾え、キーワードかと推し量れた。

    写真/手前・アストロスケール、奥・Space BDのブース(会期初日のようす)

  • ユーザー通信239号 4面 【宇宙大特集】アストロスケール NEDOによる研究開発支援の「SBIR推進プログラム」に採択

    人工衛星搭載インターフェースの技術開発を推進

    持続可能な宇宙環境を目指し、スペースデブリ除去サービスを含む軌道上サービスに取り組むアストロスケールホールディングスの子会社で、人工衛星の製造・開発を担うアストロスケール(本社=東京都墨田区)は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「SBIR推進プログラム」のフェーズ1に採択された。

    同プログラムは、政府機関が提示する研究開発テーマについて、社会課題の解決に資する研究開発を行うス タートアップや中小企業を選定して、全3フェーズで支援するもの。

    同社は、公募時に重要項目の一つとして挙げられた「宇宙開発における課題解決のための技術開発」テーマにおいて、人工衛星への継続的な利用を実現するため、デブリ除去や修理、寿命延長などの軌道上サービス事業の市場成長と競争力向上を可能とする最適なサービスインターフェース仕様の比較検討および将来の衛星システム仕様を検討する。

    アストロスケールの小山貴義社長は、 「軌道上サービスは、宇宙経済圏の持続的利用を可能にする基盤インフラとなるものであり、当該サービスインターフェース技術の開発は市場全体の発展に大きく寄与する。当社はインターフェース単体のみならず、軌道上サービスシステム全体の開発、そして法規制にも取り組んでおり、この強みを活かして開発を進めていく」と述べている。

    サービスインターフェース技術は、軌道上サービスの提供を可能とするコア技術の一つであり、同技術の標準化はサービス市場拡大や他事業者との競争力向上をもたらす重要な手段である。アストロスケールは、宇宙環境の持続的発展に大きく寄与する軌道上サービスに専業で取り組む世界初の民間企業として、軌道上サービス全体の勃興・浸透・市場形成の促進を目指している。

    アストロスケールのドッキングプレート等のインターフェース技術や宇宙暴露環境対応のロボットシステムによる捕獲および軌道上サービス提供技術は、軌道環境の保全において重要な役割を果たすと期待されており、引き続き、技術開発やルールづくりを通じてスペースサステナビリティ(宇宙の持続可能性)に取り組んでいく。

  • ユーザー通信239号 4面 【宇宙大特集】OSG×アストロスケール AAA(トリプルエー)対談実現!

    OSG 大沢二朗常務 × アストロスケール 岡田光信創業者兼CEO

     

    「宇宙開発の大問題とビジネスチャンス」

    オーエスジー(本社=愛知県豊川市、大沢伸朗社長)の大沢二朗常務が2月8日、なごのキャンパス(名古屋市西区)での中部ニュービジネス協議会の会員交流イベント「宇宙開発の大問題とビジネスチャンス」(全面オンライン開催)の第2部に登壇し、アストロスケール 創業者 兼 CEOの岡田光信氏との対談に臨んだ。

    アストロスケールは、宇宙開発の大きな妨げとなっているスペースデブリ(宇宙ゴミ)問題に立ち向かう業界屈指の宇宙ベンチャー。

    今から5年前、OSGの名を冠した微小デブリ観測衛星『IDEA OSG 1』(イデア オーエスジー ワン)は、ロケットの不具合により打ち上げ成功には至らなかったものの、オーエスジーはこの事業のメインスポンサー(2015年)を務めたのを機にアストロスケールに出資、その後も宇宙部品の供給を続けている。

    そして昨年3月には、オーエスジーが手掛ける精密部品を搭載した人工衛星『ELSA-d』(エルサ ディー)が、ロシアのソユーズロケットで打ち上げられ、軌道投入に成功した。

    第1部では岡田氏が基調講演に立ち、例えば、宇宙開発の問題点や創業の志を、次のように、わかりやすく語った。

    「本日現在、約4万個の物体が地球の周囲を回っており、そのうち人工衛星が4300機。つまり、宇宙空間にある物体の9割がデブリである。70年前までの宇宙にはゴミがゼロだった。たくさんの衛星が打ち上った結果、デブリが増えている。使い終わった衛星やロケットの上段(海に落下する第1段以外)はそのまま回っており、それらの衝突や爆発によりできた破片がまたデブリとなり、一度回り始めると数百年落下してこない、これが問題だ」。

    「このように、宇宙業界はこれまで使い捨て文化だった。これを、自動車のロードサービスや他の業界のようにメンテナンス、アフターサービスを提供する『軌道上サービス』として世界に先駆けて事業化し、宇宙の基盤インフラにしようと考えスタートした」。

    一方、第2部で大沢常務は、自身に課していることとして、まず「想像から創造」と挙げ、2015年に自社組合員向けのプレゼン時に使用した資料「オーエスジーの10、20年後を考えたことありますか?」から抜粋し、歯科業界やⅰ-Phone、自動車の未来(EV)といったパラダイムシフトを紐解きながら、「今ある情報から想像=創造する」を説いた。

    その中では、昨年末から進む最新の社内ベンチャー「Cort-X被膜」の立ち上げについても、一部言及。現在、モーター用磁石、電子デバイス、ウェアブル医療機器、時計部品にニーズが集中する、少量多品種ベースにてコーティングを行う市場実績がある、スイスのベンチャー企業との協業によるものだという。

    さらに、「AAA」(トリプルエー/ACutual Place、ACutual Parts、ACutual Situation )=三現主義(現場・現物・現実を重視し、問題の解決を図らなければならないという考え方)、「どんな小さなイノベーションも見逃さない、自分自身で調べてみる」と挙げ、大沢常務曰く、「宇宙から一転、どちらかといえば『泥臭い話』だが、共通点は多い、根底はいっしょ」だとまとめ、二人のトークセッションへと移った。

    これまでも互いの話を聴き、様々な場面で刺激を受け合い、親しい間柄の大沢常務と岡田氏の対談では、先の基調講演でも「行動」「現実」について自身の課題・実現方程式としてふれていた岡田氏は即座に、大沢常務のトリプルエー重視の考えに呼応、「経営者は一次情報を取らなければいけない」と強調した。

    最後に、あるべき姿の考え方、物事の評価方法について、岡田氏は「笑われたら、勝機があると思え」、大沢常務は「皆に反対されたものこそが、実は大ヒット製品になっている」と、それぞれ表現した。

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